脅迫などを受けて企画展「表現の不自由展・その後」が中止となった、あいちトリエンナーレ。あいトリの企画アドバイザーを務めていた批評家の東浩紀さんは8月14日、Twitterで辞任を表明した。

Ryosuke Kamba / BuzzFeed

東浩紀さん=2017年

東さんは7日に「相談役として役割を果たすことができず、責任を痛感しています」などとして謝罪。今年度の委嘱料を辞退することを申し出ていた。

13日夜には「これ以上ひとりでも作家が展示辞退したら、アドバイザーを辞任するつもりです」とツイート。

その後、新たに7人の海外作家が展示の辞退を求めていると報じられたことから、芸術監督の津田大介さんにメールで辞意を伝えたという。

「提案は採用されず」

「表現の不自由展・その後」のサイト / Via censorship.social

東さんはTwitterで「津田監督には、この1週間、いろいろ善後策を提案していたのですが採用されず、アドバイザーとして職務を果たすのが困難な状況になりました」と説明。

「今後は、公的な立場を外れ、一個人としてトリエンナーレを応援していければと思います。あらためまして、このたびは、ぼくの力が及ばず、県民のみなさま、出展者のみなさま、申し訳ありませんでした」と改めて謝罪した。

そのうえで、「『表現の自由』vs『検閲とテロ』という構図は、津田さんと大村知事が作り出した偽の問題だと考えています」と指摘。津田さんの責任について以下のように言及した。

「海外のアーティストは表現の自由を訴えている。けれどもそれは日本の市民には特定のイデオロギーやプロパガンダに賛同する党派性のように見える。このようなねじれを作り上げた責任は津田さんにあり、彼はそれを早急に解きほぐさねばなりません」

また、文筆家の岡田育さんのツイートに答える形で「運営側に毅然とした態度があれば、離脱作家のドミノ倒しは避けられたし、避けられなかったとしてももっと遅くできたはずだと思います。このままではもっと離脱作家が増えるかもしれません。今回はアーティストがたいへん気の毒です」とも述べた。

東さんのツイート全文

東さんはあいトリの問題が起こる以前からツイートに鍵をかけ、リツイートされないようにしていたが、辞任について明らかにした後で「大事な話をしているので鍵あけました。またしばらくしたら鍵かけるので、この隙にフォローするなりRTしたりするなりしといてください」と投稿した。

辞任理由に関する東さんのツイートの全文は下記の通り。

すでに報道されているとおり、海外作家7人より展示中止の申し出が出たようです(ぼくも報道でしか知りません)。 津田監督には、この1週間、いろいろ善後策を提案していたのですが採用されず、アドバイザーとして職務を果たすのが困難な状況になりました。

そこでさきほど、アドバイザーを辞任する旨のメールを津田監督と事務局に出させていただきました。今後は、公的な立場を外れ、一個人としてトリエンナーレを応援していければと思います。あらためまして、このたびは、ぼくの力が及ばず、県民のみなさま、出店者のみなさま、申し訳ありませんでした。

辞任となりましたのでぼくの考えを整理しますと、ぼくは今回の問題について、「表現の自由」vs「検閲とテロ」という構図は、津田さんと大村知事が作り出した偽の問題だと考えています。ぼくはこの1週間、津田さんにはそれを訴えてきました。

ではなにが本質だったのか。それは「外交問題に巻き込まれたこと」と「市民への説明不足」だというのが、ぼくの考えです。慰安婦像については、政治家やメディア(海外含む)に政治的に利用されてしまいました。天皇作品については、過激な表現が多くの市民にショックを与えました。

それゆえ、ぼくは津田さんに、論点をこの2点に絞り、外交問題に安易に巻き込まれる展示を行ったこと、市民に十分な説明をしないまま過激な作品を展示しショックを与えたことについて、まず誠実な謝罪をし、そのうえで対策について市民や出展者を巻き込んで議論をすべきだ、と提案しました。

そして、市民や出展者の信頼を回復し、「議論の場の再設定」を実現可能なものにするために、まずは混乱の責任をとって監督を辞任し、ほかのキュレイターと協力関係を築くべきだと提案しました。けれども、残念ながら、津田さんを動かすことはできませんでした。

ぼくの観察するかぎり、今回「表現の不自由展」が展示中止に追い込まれた中心的な理由は、政治家による圧力や一部テロリストによる脅迫にあるのではなく(それもたしかに存在しましたが)、天皇作品に向けられた一般市民の広範な抗議の声にあります。津田さんはここに真摯に向かい合っていません。

それら抗議は検閲とはとりあえずべつの問題です。日本人は天皇を用いた表現にセンシティブすぎる、それはダメだと「議論」することはできますが、トリエンナーレはその日本人の税金で運営され、彼らを主要な対象としたお祭りでもあります。芸術監督として顧客の感情に配慮するのは当然の義務です。

この問題を「表現の自由」vs「検閲とテロ」の構図でとらえているかぎり、そこには出口がありません。表現の自由を守らない美術展を支持するアーティストはいません。その意味では海外作家の離脱は当然です。津田監督は、早急に、表現の自由は守る、「だからこそ」の展示中止であり再設定なのだという論理をつくり、作家を説得しなければなりません。

ぼくはそれは、むずかしいけれど不可能ではないと考えます。前述のように、ぼくはこの1週間、その「新たな問題設定」に進むように提案をしてきました。けれども、理解を得られないまま、新たな作家が離脱する局面を迎えてしまいました。

この状況はたいへん心が痛むものです。海外のアーティストは表現の自由を訴えている。けれどもそれは日本の市民には特定のイデオロギーやプロパガンダに賛同する党派性のように見える。このようなねじれを作り上げた責任は津田さんにあり、彼はそれを早急に解きほぐさねばなりません。

ぼくは今回アドバイザーを辞任しましたが、ぼくが辞任したのは、このようなことを自由に言うためでもあります。今後、「海外の現代美術作家」vs「日本の市民」という不毛な対立構図が作られないよう、微力ながら情報を発信できたらと考えています。よろしくお願いします。