自由な働き方を選択できる一方、企業に雇用されている「労働者」を守る法制度からは対象外とされているフリーランス。

特に、多くの俳優や声優が個人事業主として事務所に所属する形で活動している芸能界は、「ハラスメントの温床となりつつある」と指摘されている。

Saori Ibuki / BuzzFeed

日本俳優連合やフリーランス協会などの3団体は9月10日、こうしたフリーランスや芸能関係者を対象に実施した「ハラスメント実態調査」の結果を発表した。

回答者1218人のうち、61.6%がパワハラ、36.6%がセクハラを受けたことがあると答えた。そのうち、第三者に相談できたのは、被害を受けた人の4割に満たなかった。

調査結果は9日、ハラスメント対策についてまとめた要望書とともに厚生労働省に提出された。

「夢のために」我慢する業界

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調査を実施したのは、約2600人の俳優や声優が加盟する「日本俳優連合」と、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)のフリーランス連絡会、フリーランスで働く人を支援する「プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」の3団体。

7月16日~8月26日にかけて、インターネットで回答を募った。

有効回答1218件のうち、女性は68.7%で、男性は29.7%。職業別では「俳優・女優」(20.9%)、「編集者、ライター、ジャーナリスト、翻訳者、通訳、校正者」(14.8%)、「声優」(10.7%)が最も多かった。

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芸能界やメディア関係の回答者が多い理由は、仕事の「発注者」である企業と、「受注者」であるフリーランスの間のパワーバランスにおいて、「発注者」が圧倒的に強い立場にある業界だからではないかと、フリーランス協会代表理事の平田麻莉さんは指摘する。

「芸能事務所や出版社、テレビ局などは数が限られているので、働く側にとっては取引先の代替可能性が低く、トラブルがあった時に、そことの契約を切って他と働くことが難しい状況に置かれがちです」

「さらに、需給バランスの問題もあります。圧倒的に働きたい人が多い業界のため、『夢のために』と我慢してしまう人が多く、発注者が強くなる傾向にあります」

調査で明らかになったこと

具体的な被害内容では、「精神的な攻撃(脅迫、名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など)」、「過大な要求(不要、あるいは遂行不可能なことの強制)」、「経済的な嫌がらせ」がもっとも多かった。

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中には、「不必要に体を触られた」「性的な関係を迫られた」「レイプされた」など、深刻な性被害も少なからず寄せられた。

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ハラスメントの影響については、被害を受けた人の4人に1人が「業界が嫌になって仕事をやめた」と答えた。

他にも多くの人が「怒りや不安を感じた」「仕事への意欲が減退した」など、心身への影響があったと答えた。

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一方で、ハラスメント被害を誰かに相談することができたのは、被害を受けた人の約半数だった

さらに、相談した518人のうち152人は「家族や友人、知人」にしか相談しておらず、第三者に相談できたのは、被害を受けた人の38.5%に留まった

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被害を相談しなかった理由で、もっとも多かったのは「相談しても解決しないと思った」だった。

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また、「人間関係や仕事に支障が出る恐れ」が53.7%、「仕事失う/キャストを外されるなど、不利益を被る恐れ」が42.8%を占め、ハラスメントに対して声を上げることで、収入源を失う不安を感じるフリーランスが少なくない現状を示した。

国内に300万人、就業者の5%

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内閣府が今年7月に発表した推計によると、国内でフリーランスとして働く人は300万人を超え、就業者全体の約5%を占める。

企業と雇用関係を結ばずに、個人のスキルを活かして自由な働き方を選択できる一方、最低賃金や労災保険、「労働者」へのハラスメント防止を掲げた法制度からは「対象外」とされている。

「フリーランスや就活生、求職者などの『労働者』ではない人には、ハラスメント防止の配慮や措置の責任を負う人がそもそも存在しないため、無法地帯になっています」

「ハラスメントを告発したことによる不利益取り扱いも禁止されておらず、労働相談に関する窓口や支援制度も『労働者ではない』という理由で、門前払いされることがあります」と平田さんは言う。

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こうした問題を踏まえ、厚労省の「雇用類似の働き方に関する検討会」は、発注者からのセクハラ防止について、労働政策審議会で審議する必要があると指摘。

企業にパワハラ防止を義務付けた法案の付帯決議でも、フリーランスや就活生へのセクハラについても必要な対策を講じ、パワハラ防止対策に関する指針で明記することが求められた。

13の要望

調査結果とともに厚労省へ提出した要望書では、フリーランスに対するハラスメント対策に必要なこととして、13の項目をまとめた。

「ハラスメント防止措置の対象にフリーランスを含める」ことのほか、このような内容を求めている。

ハラスメントに抗議したり、発注者企業や第三者に相談したことを理由とした不利益取り扱いを禁止すること。

不利益取り扱いの例:

  • 一方的な契約の打ち切り、契約条件の変更
  • 報酬などの減額
  • 仕事の発注をやめる、途中でキャストを下ろすなど
  • 不利益な評価を行う、被害者の評判を下げるような言動
  • 就業環境を害する嫌がらせ、いじめ、差別など

仕事を行う場(打ち合わせ、仕事の紹介を含む)についてのルールを、各産業・企業で定めるよう指針に明記すること

例)自室やホテルの部屋、カラオケボックスなどの個室で1対1の打ち合わせやオーディション等を行わないこと

行政の相談窓口・解決援助を、フリーランスも活用できるようにすること。相談窓口の周知をすること。

要望書は調査結果とともに、労政審の審議などで参考資料とされる予定だ。

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